「永遠の0」
今年初の映画館来訪。「永遠の0」を観てきました。
2014年の鑑賞第1作品目は、これにしてよかった。
原作が大好きです。
児玉(清)さんのご忠告(解説)にも関わらず、電車の中でラストパートを読んでしまい、中目黒あたりでつり革に捕まって突然泣き出す、という不審行動を取らされた思い出の本w
映画化が表に出る前から、キャスティングあれこれの妄想してみたり、キャストが発表になったときに「岡田くんは宮部じゃねえ!!」などと暴言を吐いたり、布教(?)のために人にプレゼントしたりしてきて、ついに念願叶っての鑑賞という、思い入れたっぷりな状態でしたので、期待外れだったらヤだなー、と密かに思っていたのですが、期待以上でした。
最後は泣きすぎて頭痛くなりました。大きめのタオル持って行ってよかったです。
気になる部分がなかったわけじゃないですけど、たくさんの人に観てもらえる、エンターテイメント性の高い映画としては、これ以上はないほどの完成度なんではないかなーと思った。
以下、ネタバレ含む感想は続きをどうぞ。
割と謎解き的な部分もあるお話なので、未見、未読の方はネタバレ回避した方がいいと思います。
岡田くんが何かのテレビに出たときに、試写で横に座ってた原作者の百田さんが、始まって数分で「これでもか!」というくらい泣き始め、そのあまりの熱量で試写に全然集中できなかった、という笑い話をしていたのですが、今日の自分、ちょっとその状態に近かったかもしれないす…(´∀`;A
最初に書いたように、原作が好きすぎて「あ〜やっと映画化されたものが観れる!」という感激と、ちゃんと想像の範囲内で動いてくれる登場人物たちにとにかく涙。
そして夏八木勲さん…。夏八木さん出て来るともうダメよ…まだ無条件に涙腺崩壊してしまうー。*1
最後に原作を読んでから、ほどよい時間が経過していたので、原作とここが違う!あそこが違う!と即座に文句言えるほど、ディテールを覚えていなかったのも幸いだったかも。
途中途中「ん?!」と引っかかる部分がなかったわけではないけど、全体として、百田さんがこの小説を通じて伝えたかったことはちゃんと伝わってきたし、原作の精神が大掛かりな大作に換算されるときに生じがちないらない誇張や、大きい味付けがほとんどなく、とても分かりやすく、過去の戦争の愚かさを説き、今を生きる自分たちに「それでいいのか?」とちゃんと問いかけてくる内容になってたと思います。
まずはなんと言っても俳優陣が素晴らしすぎたので、そこから行きますと、まず、平幹さんが空き缶の痰壷に「ガーーっ!ペッ!!!」と痰を吐くシーンが来た瞬間「この映画はジジイが引っ張る素晴らしい映画になる」という確固たる確信を持ちましたw
この映画で元零戦搭乗員を演じた俳優さんたちは、百戦錬磨の、日本を代表する名優ばかり。
お一人お一人の画面の中での吸引力が、そりゃーもうリアル国宝級のド迫力で、脇役*2がこれだけ充実していると、映画全体の底上げ感がすごいことになるんですね。
日本にはまだまだたくさん、すてきなおじさま俳優がいるんだ!なんて素晴らしい国なんだ!!!と本気で思いました。名優たちの、熟練の演技をたっぷり堪能させていただきました。
若者たちも負けずにがんばってました。
岡田くんは、最初に配役を聞いたときは「岡田くんなら出来ると思うけど、宮部は背の高い男なんだよーわたしゃ旬くんがいいんだよぉぉぉ〜!」とワガママを言ってました。
が、結果やっぱり岡田くんは出来る子だった。
「岡田くん以外の宮部は考えられない」とまでは行きませんでしたが*3、とっても魅力的な宮部でした。生きて妻子の元に帰るためにムダな戦いを避け、あの時代に、自軍の弱点を冷静に見抜いて指摘できる強さを持ち、その公正さ、有能さゆえに、生きにくい時代を生きなくてはならないことへの苦悩や、ある種の諦めみたいな部分も、岡田くんはとってもうまく表現してくれてた。
戦うことに疑問を持ちながらも、部下が「軍人としての誇り」を汚されたときには容赦なく上司に声をあげてボコボコにされ、、、、かっこいい。かっこよすぎる。
ほんと、涙が出るほどかっこよかったです。
そして、それでこそ宮部なんですよねー。
だから、岡田くん、さすがだなーと思いました。
「図書館戦争」の時も、さすがだなーと思ったし、岡田くんはまず間違いない俳優さんですね。
春馬くんもよくがんばってました。
最初の「いかにも」な軟弱な今風の若者が、段々と変わっていく様子が見所。
これは、原作でもそうだったと思うんだけど、観客側は、春馬くん演じる健太郎の目線で過去を一緒に手繰っていくわけで、最初は「零戦?ふーん」ってとこから始まり、当事者の色々な証言を追ううちに段々と目線を当事者寄りに変えて行き、途中の合コンぶち切れシーン*4で、一緒に怒鳴りたくなるところまで観客を連れて行ってくれるか*5、最後は、現代社会に生きる自分と、「特攻」というものが存在したあの時代をガッチリ繋ぐ架け橋になってくれなきゃ困るんだけど、春馬くんは本当に上手でしたね〜。
春馬くんが健太郎役でよかったと思いました。
確かに、岡田くんの面影があるって言われたらあるしねw
そうそう、過去と現代の俳優さんの組み合わせも、絶妙だった。
それぞれチーム組んでカーテンコールで登場して欲しかったくらいだ。惜しみなくスタオベしたと思う。
橋爪功-濱田岳チーム、山本學-三浦貴大チームもよかったですけど、田中泯-新井浩文チームがぶっちぎりでよかったです。今思い出しても涙出るくらい。原作でもここ(景浦組)は本当によかったですけどね。
んでもって、夏八木勲-染谷将太チームは、ほんのり「その☆しおん」な感じでこれまた好きでした。
染谷くん、いい役もらったなあ、と。
大事な役だけど、やんわり溶け込むことの出来る染谷くんの特性を活かした絶妙なポジションで、最後は真央ちゃん相手に健闘してました。
初々しい、よいラブシーンでしたわ。
原作読んだときも、ここは「えっ!それでホントにいいの?」って思った部分だったので、染谷くん、真央ちゃんコンビの職人技で「それでいいんだね(達観)」という状態まで、気持ちよ〜くねじ伏せてもらいましたw
風吹ジュンさんが「八重」の後遺症で「おっかさま!」にしか見えなかったのは、わたしの弱さです…その辺もっと強くなりたい。
物足りなかった部分があるとしたら、太平洋戦争の戦況の部分を、あと少しだけでいいから詳しく説明することはできなかったのか?というところかな。
百田さんの小説は、フィクションの登場人物の物語の部分と同じくらい、実際の資料を元にしたドキュメンタリー的な部分も読み応え充分なので、ドラマだけでなくドキュメントっぽい部分をもう少し足してくれたらカンペキだった…という個人的な意見です。
あと、最後はちょっと感傷的にまとめにかかってるかなーって言う感じがしました。
「火垂るの墓」的な、現代社会と過去を重ねる演出は、わたしにはちょっとピンと来なかった。
あれはアニメだから成立したアレで(なんのこっちゃw)、せっかくの実写映画なのだから、ファンタジーっぽい演出はナシで終わって欲しかった。そこがちょっと残念。
そう、この映画は「特攻とはどういうものだったか」「太平洋戦争とはどういう戦争だったか」は、こちらがある程度分かってることを前提として作られている、もしくは、観客が「その戦争が具体的にどうだったかは理解できずとも、一般的な戦争の愚かさを理解してくれれば充分」というところに的を絞ったのもしれないな、と思った。
原作に込められた「失敗の本質」*6的な、組織の欠陥や国の失策の指摘にまで行こうとしたら、エンタメ映画としては成立しなくなってしまうわけで、その部分を削ぎ落とさざるを得ないことは、充分理解できるんですけどね。
実際の零戦搭乗員たちの生活とか、戦闘の時の様子や、ミッドウェー海戦やラバウルの過酷さを具体的に感じさせるエピソードが、もう少しだけ欲しかった気はします。
だから、映画だけを観て少しでも感動した人には、ぜひ原作を読んでその感動の源を補強してほしいな、とは思いますね。膨大な資料を読み込んで構成された、緻密な「舞台説明」の部分が、百田作品の真骨頂でもありますからね。
映画ならではの迫力ある空中戦の映像や、零戦そのものの美しさの表現は、映画館でしか味わえませんし、原作も読んで映画館で映画で観る、というのが、「永遠の0」のパーフェクトな楽しみ方なのかもしれません。
わたしも、もう一度原作を読み返してみようと思いました。
興行成績も好調なようなので、ロングヒットになるといいな、と思ってます。
*1:夏八木さんの訃報を聞いたとき、ありえないくらいに大泣きしてしまったわたし。
*3:小栗宮部だって絶対よかったはずだと今も信じてる
*4:原作が…とはあまり言いたくないんですが、原作では、ここは武田と健太郎姉の知り合いのジャーナリスト(高山)が絡んだ印象的なエピソードで、ここをなんとしても映画に入れるためには、尺の問題でこの合コンシーンにまとめるしかなかったんだな、と。仕方ないけどちょい残念でした。
*5:原作では、最初は高山に賛同する部分もあった自分が、後半「このやろー高山黙れ!」と憤るまでに目線が変わったことに驚き、小説を読む事の醍醐味を味わった大事な部分でもあります。
*6:「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」-中公文庫