【映画】「バンクーバーの朝日」
「バンクーバーの朝日」、やっと観てきました。
ずっと楽しみにしてたのですが、一般の方のレビューのみならず、プロの批評家の方のレビューの中にも、キビシイものもあったので、少し心配していたのですが。
すごくよい映画でした〜。
石井監督、丁寧なお仕事されてます。
これはハリウッドでも通用する出来なのでは…と、多少の贔屓目は入ってますけど、思いました。
Twitterでは以下の感想をつぶやきました。
(この後の感想には若干のネタバレを含みます。)
バンクーバーの朝日、見終わった。えー!すごくよかったよ!久しぶりに「THE映画」っていう日本映画観たわ〜
— ななこ (@cinemananako_7) 2015, 1月 14
各所のレビューが微妙だったから心配してたけど、めちゃくちゃよかった。ちゃんと野球してたし、いろんなとこで泣けた。キャストもよかった。
— ななこ (@cinemananako_7) 2015, 1月 14
ハリウッドの人間ドラマ大作だと、まだまだこういうのたくさんあるけど、邦画だと最近あんまりないよねぇ。軽くてかっこよくてスピーディか、逆に退屈かどっちかだけど、バンクーバーの朝日は、すごくバランス取れてて、丁寧に着実に引き込まれる感じだった。石井監督さすが!
— ななこ (@cinemananako_7) 2015, 1月 14
ひとつひとつ丁寧に描いてるけど、作り手が自分に酔ってるような傲慢さは全然なくて、
ただただまっとうに、真面目に、「人が困難と戦う姿」と「それを乗り越える姿」を描いてました。
印象的で、好きだった演出は「手」のアップ。
ブッキー演じる主人公と、佐藤浩市さん演じるパパの手。
ラストに登場した、実際の朝日軍元選手の方の手。
爪に汚れが入り込んだ、無骨でガサガサの手。
主人公もその父も、生き方は違えど、その手は同じ。
この手のアップ映像だけで、毎日ぼろぼろになるまで働いていろんなことに耐えながら、生きて行く姿が、実感としてグーッと来ちゃったんですよね。
最後に映る、年老いた手は、そのすべてを乗り越えた、穏やかな、でもちゃんと「働いてきた男」の手で、
もうこれだけで、「あー、なんていい映画なんだ!」と思ってしまいました。
(相変わらず単純ですが)
ウェブでみつけたレビューの中に、
「野球をほとんどしない」的な感想があったのですが、
確かに、「野球映画」として観ると、物足りないのかもしれない。*1
そこは、「わかりやすいヒーロー映画」になっていなかったことと、無関係ではないと思います。
わたし、この映画の90%を絶賛しますが、残りの絶賛できない10%のうちの大部分が、
「妻夫木くん演じるレジーが迷ったままの主人公である」という点です。もちろん好みの問題ですが。*2
なんでか日本の映画や舞台やドラマやアニメは、「迷える男の子」を主人公にするのが好き*3で、最後の最後まで、割とうじうじ決心がつかないままで、前を向いて歩き出しはしても、「迷える男の子」からの劇的な転換はないってのが多くて、今回のレジーも、まあ割と、ハッキリしない男子なわけですよ。
もちろん、主人公なワケですから、途中からちゃんと前は向きますし、力強いシーンもあるんですけど、「全体的にどうもハッキリしねーなーー!」というのは、正直思いました。
上映が終わった後の映画館の廊下で、推定60代のおばさま2人が、
「妻夫木ってのはあれだね、なーんかボソボソしゃべってハッキリしないよねえ。演技だけじゃなくて普段からそうだよねえ」と、思いっきり妻夫木くんをdisってて、笑ってしまったのですが、*4
ま、個人の好みの問題とは言え、これだけの大作の主人公としては、もう少し分かりやすい成長を見せてもらえた方が、映画としては盛り上がったかな、と思いました。
なので、体格の違うカナダのチームに勝つ策として、「バント」を思いつくところが、
あまり劇的に感じられなかった、という面はあると思います。
一世一代の転換というよりは、ちょっと思いついてやってみたらうまくいったぜー!みたいなノリに感じられたことは事実です。
だからって「バントばっかじゃカッコつかねえよ!」というセリフもちゃんと入れてあったし、最後はスーパー・アイドル亀梨さんの、「かっとばしてやるぜ!!」で〆たわけで、こちらが不満に思いそうなところは、ちゃんと監督がすくってくれてるので、ちゃんと観てればだいじょうぶなわけですが。
おっと、絶賛90%のくせに、残り10%について多く語ってしまった(汗)。
絶賛部分は、その丁寧な映画作りと、キャストの素晴らしさね。
亀梨くんをロイ役にキャスティングした監督は、天才ですね!
朝日の中心メンバーの中では、別行動が多く、技術もチーム内で突出、移民として生きることに対しても、他のメンバーより強い思いを持つ、(いい意味で)浮いてる役を、キャスト陣の中で唯一のジャニタレという違和感にうまくリンクさせて、ロイ役のざらっとした感触がより強めに出たな〜、と思いました。
また、「朝日の試合を見てると、わたしもがんばろうって思える」という高畑光希ちゃん演じるレジーの妹(=日本人街の人全員)の心情と、「スーパー・アイドルのパフォーマンスを見て、毎日がんばろうって思える」というおたくの心情もうまく絡まり合い、*5
光希ちゃんが歌でみんなを泣かせるシーンで、ずっと後ろ姿で演技してる亀梨くんが本当に素晴らしくって、
ああああこの監督天才や・・・・
と、思いましたw
あとは、最後に日本人街から去るシーンで、唯一家庭持ちの設定だった上地くん演じるトムが、家の鍵を閉めるところがあって、そこもエライ泣きました、わたし。
ブッキーのナレーションが「この街は消滅した」って言ってるのに、家に鍵をかけるトム。
もう戻ってこられないのに、鍵をかける。
その姿に、トムの背負ってたもの、守らなきゃいけないものの大きさが一気に感じられて、泣いてしまったんだよねー。
逆に、何か背負ったりしすぎてない池松くんも新鮮で、弟キャラ炸裂でかわいかったし、
光希ちゃんの超絶な妹キャラもよかったー。*6
涼くんは、安定感抜群で、抜群すぎて、もはや知らない人を見てるような気になったりもしました。
いい意味で。
「任せて安心」であるというのは、本当に素晴らしいことで、ここを最低ラインとして、
この後はこれ以上の位置*7でしか出ない数年、というのがあってもいい気がしてます。
この映画のこのメンバーの中に、涼くんがいて本当によかったです。
野球シーンもかっこよかった。
次回作も超絶期待してます。
*1:でもそれは、 日テレドラマ「弱くても勝てます」が、こっちが期待した野球ドラマではちっともなかったこととは根本的に違って、この映画には、必要な野球シーンは最大限入ってたと思います。
*2:その他の絶賛できない部分は、宮崎あおいちゃんと本上まなみちゃんの使い方。あの2人だけ、あの世界に溶け込み切れてなかったように思った。
*3:自分が観た中でパッと思いつくのは「キャプテン・ハーロック」のヤマ、「髑髏城の七人」のおぐりしゅ捨之介
*4:その後「やっぱり佐藤浩市が一番かっこよかったわよねえ!!!」と盛り上がってましたw
*5:まあここはおたく独特の心情かもしれませんが
*6:「高校中パニック」の川島海荷の超絶な後輩感に匹敵する妹感でした。「高校中パニック」の時は、海荷ちゃんに「センパイ!」と呼ばれるなら、わたしはセンパイにでもなんでもなるぜ…と思ったのが、「バンクーバー」では、光希ちゃんに「お兄ちゃん」と呼ばれるなら、わたしはお兄ちゃんにでもなんでもなってやるぜ…という心境に…。
*7:つまり、3番手以上