cinemananakoの日記

映画と芝居と本とアイドル好きな酒飲みおばはんの日記

シアターコクーンで「唐版 滝の白糸」を観る。

唐十郎の魅力にハマる。

10/21(月)、10/27(日)のマチネを観てきました。
2回目はNEWS関連のお友だちのご好意により。

唐×蜷川の舞台を観るのは、3作品目。
1度目は藤原くんの「下谷万年町物語」、2度目は古田さんの「盲導犬」、それから「滝の白糸」。
最初の「下谷…」を観たときの衝撃は忘れられないっす。
なんたって、1ミリも話の内容が理解できなかったんですから(笑)
お芝居観ててあんな敗北感感じたのは初めてでしたww
それなのに、「あーなんかすごいもん見た…」っていう感動は、それまでに感じたことのないレベルで、舞台上の池にジャバジャバ飛び込む役者さんたちに「こんな舞台見た事ない!!!」と大興奮して帰ってきたんだった。(まだまだ観劇初心者だったからってのを差し引いてもすごかった)

2度目の「盲導犬」では、「普通に話を追う」という見方を最初から完全に放棄して、「歌を聴く」姿勢で観たらこれが大正解で。
本物のワンコとか、舞台一面にデーンと立ちはだかるロッカーとか、半ケツの小出くんとか、ガスバーナー持った古田さんとか、いろんなワケの分からないものたちにワクワクして、「楽しかったー!!」と心の底から思ったんだよね。
なんて言っても、宮沢りえちゃんの銀杏が、妖艶で力強くて、美しく狂ってて、自分がなんでお芝居観るのが好きなのか、その一番底にある懐かしい気持ちを思い出したりして…。
(客席に涼くんと窪田くんがいた、というのも一生忘れられない思い出ですがw)

窪田くんの初々しさに泣く。

実を言うと、「唐版 滝の白糸」が再演されるって聞いたとき、アリダ役を涼くんに!という気持ちがなかったわけではない(というか、むしろ前のめりで彼にやってほしかったw)。
なんたって、藤原くんがやった役だしね。もうそろそろ涼くんにも、蜷川さんでこれくらい大事な役をやらせてもらってもいいんじゃないかって気持ちはありました。

だから、アリダが窪田くんだと聞いたときは、「えー!窪田くん大丈夫なの?」ってちょっと意地悪な、複雑な気持ちと、俳優としての実力を認め切っているから「いや、窪田くんならきっとやれる」っつーちょっと羨ましいような気持ちが入り交じって、しばらく軽くモヤっとしてたんですよね。

そんなだから、期待9割ひやかし1割で劇場の椅子に座ったわけですが…。

1回目に観たときは、声がね、少し枯れていて、大きく声を張らなきゃいけないシーンで、声が割れてしまって聞いてる方もつらかったとこがあったんですが、2回目はきっちりリカバー。
楽しんでやってるなーってのが伝わってきて、とてもよかった。

このお芝居は、アリダが生まれ直すお話、と大きく捉えているのだけど、その「赤ちゃん感」とか「初々しさ」みたいなものは、実際に蜷川舞台初めてで恐らくド緊張しているであろう窪田くんとものすごくよくマッチして、ちょっと悔しいけど、やっぱりこの役は、(役者として)ある程度老成している涼くんでは、うまく行かなかったかもしれない…と認めるにいたったのでしたw

大ブレイク中でイラついてる小栗旬を、カリギュラにキャスティングしたように、「(最初に台本を読んだときに)頭がポカーンとしてしまった」舞台経験の少ない窪田くんに、初々しい子どもが、別のステージへと成長していく役をやらせたかったんだろーなー蜷川さん…と勘ぐってしまうくらい、窪田くんのアリダがぴったりすぎて、本人の演技力とかそういうとこを超えた部分で、ものすごーーく感動してしまったよ。そらもう自分でもビックリするくらい、心を打たれまくりましたw

参考までにこちら↓


Bunkamuraシアターコクーン「唐版 滝の白糸」窪田正孝コメント映像 - YouTube


…と、こうやってしゃべってるのを見ると、やっぱり窪田くんてあんまり舞台向きの声じゃないな、とかも思うんですけど、アリダはほんっっとに良かった!

後半、アパートの2階が崩れおちるあたりから、明らかに表情が変わってくるんだよね。
他の人がセリフ言ってるときの、窪田くんの表情ったら。
あんな恍惚の表情を舞台でする子、そうそう見られるもんじゃないわーすごいわーかわいいわー、と内心大騒ぎw

まっ、言うまでもないけど、最後の血まみれシーンね、あそこで、アリダが変わって行くのと同時進行で、窪田正孝という人が、役者としてまた生まれ直す、みたいなシーンも見せられてしまうので、役者オタとしてはもうかぶりついて見ざるを得ないw
そして気付けば号泣…2回ともそんな感じでした。

クライマックスからカテコでの窪田くんの、トランス状態に近い、なんとも言えない表情と、まさに生まれたての子鹿のように(笑)、細かく震えてるんじゃないかと思うような心もとなさ(とある種の図太さみたいなもの)を見て、一人の俳優が劇的な成長を遂げる舞台を観られたことに、ものすごい喜びを感じてしまったんだよね。

3人のバランス。

さっきから窪田くんのことばっかり書いてますがww

平さん、大空さん、窪田くん、の3人のバランスもとてつもなく良かったと思います。そもそもの「顔立ち」「佇まい」の感触が、3人3様バラバラで、演技のクセなんかもそれぞれ個性的で、割とアクの強いお三方だと思うんですけど、この3人のバランスが異常によい。

バラバラなのに、3人いるシーンが一番しっくりくる、不思議な組み合わせでした。
平さんは、もうね、すべてが出来上がってらっしゃるので、ただそこにいるだけでTHE役者。
多少セリフが早く走っても、全然オッケー。
座っても立っても、何やってもかっこいい。
スポットライトを浴びるのが通常運転、という生き方をしてらっしゃる人独特の、舞台や劇場そのものとの一体感がハンパなかった。

大空さんは、なかなか出て来ないんですけど、出て来てからの引っ張り方がスゴい。
真っ赤なワンピースは「盲導犬」の銀杏さんも着てたけど、グレーとかカーキとかの暗い色合いの舞台に、大空さんが突然空からバーーーーンッと現れる(音楽とともに)と、舞台の空気がガラッと変わるんですよね。

蜷川さんは、そうやってやや単調で閉塞感のある場面に、パーーンッと稲妻みたいに色のあるものや、美しいものを差し込んでくるのがお上手で、そこがわたしが蜷川演出で一番好きな部分かもしれません。

今回は2回ともとてもいい席で見れたので、大空さんの登場シーンも暗がりでうっすら観察できてしまったのだけど、上手で大きな音のする落下物を落とすタイミングで、大空さんが衣装簞笥の上にすっと立つのね。その動きの軽やかさと言ったら!見れてよかったです。

大空さんは、よくも悪くも「宝塚」で、立ち方も話し方も、まんま宝塚なのですけど、なぜそれでよしとしたかは、最後の水芸のあたりからハッキリしてくるんだよね。

「芸を見せて、その芸に対するお代をしっかりちょうだいする」というお甲さんのエキセントリックなプロ根性(?)みたいなものが、抽象的なものを見せる唐さんや蜷川さんのようなお芝居でなく、ハッキリと人を楽しませて、ハッキリと目に美しいお芝居の世界でトップを張ってきた人に表現してもらうと、なんとも言えない感情を呼び覚ますんですよねー。なんなんでしょ、これはw

圧倒的な存在に圧倒される快感に、思いっきり浸りました。
アワワワ…くらいは言ってたかもしれない。脳内でw

お甲さんが泣き崩れたりするところは、「盲動犬」のりえちゃんと比べてしまって(同じような衣装だし)「ちょっと情感が足りない…」と思わなくもなかったけれど、滝の白糸大夫になってからのお甲さんのあの神々しさや貫禄は、りえちゃんでは出せなかったとも思うのです。

わたしの涙腺決壊はここがスタート地点で、お甲さんの扇子から水が出始めてカノンの音楽が鳴って。
「あー伝説の水芸をこの目で見てるんだ!」という感動と、きりりと舞台中央に立って、冷静に考えたらバカバカしくもある水芸を神々しく披露する大空さんを見てると、「やっぱり自分は舞台が好きだー!!」という気持ちがぐわあっと沸き上がってきたんですよね…(唐シリーズを観て引き起こされる気持ちは、いつもこれ)

まーそっからはまさにクライマックスで、舞台は水浸しだし、工事夫が出て来て、窪田くんはほうき振り回すし、平さんは極悪に突っ走るし、水道ホース切られて、「手首の蛇口をひねる」お甲さんなど、シュール極まりないない不思議世界なのですが、なーぜーかー!ここで大号泣してしまうわたしですww

なんだろ、派手派手しいのが好きなのだろうか…w

血まみれアリダが、クレーンに乗って宙を舞うお甲さんの手首を止血してあげるとこが、わたしにとっての一番の大感動シーンで、その後の窪田アリダの俳優的興奮が、そのまま客席にいる自分に乗り移ったようなトランス状態に入り、カーテンコールでの拍手大喝采へとなだれ込む……

客席で、「ガラスの仮面」を初めて読んだときの自分を思い出してました。
お芝居のチケットを極寒の海に捨てられ、迷わず飛びこんで拾いに行く北島マヤ…今この「唐版 滝の白糸」のチケットを、誰かが海に捨てたら、もしかしてわたし飛び込んで拾うんじゃねーか……そんな気がする4○才…w

つまり、「誰かが作った何かに感動する」って、自分の人生の中ではとても大きなパートを占めていて、どちらかというと、日常生活の方ではあまり大きな変化を望んでいないが故に、お芝居や映画などの虚構の世界の中では、一見「何がなんだか、、、、」みたいなものの中に仕込まれた感動に、もうずーーーーっと取り憑かれっぱなしなのかな、と、そんな気がしました。

そういう意味で、唐×蜷川の世界というのは、自分にとってはハマるべくしてハマる世界なのかもしれないねー。

蜷川さんがまた唐舞台やったら、絶対観に行こうと思います。

お芝居は、一回一回大事に観よう、と改めて思った。
こうやってちゃんと感想を書くことも大事にしないとね。
せっかく行くんだからさ。